6/25/2015

20世紀初頭の建築散歩/シテ・ユニヴェルシテール


Tour du monde à la Cité internationale universitaire de Paris

パリの南の端にあるシテ・ユニヴェルシテールは、学食、図書館、集会所、小劇場、プール、郵便局まであるコミュニティーを形成する、世界各国の学生寮が集まる特殊な一角です。
このシテの始まりは、第一次大戦後、世界の学生、研究者、芸実家達の平和的な交流を深めようという一種ユートピア的な思想です。また当時の住宅難で、学生が住めるような安価な住居が決定的に不足していたこともその理由。大銀行家や企業、世界各国政府や自治体などに寄付を求め、1925年にまずフランスの石油関係の実業家、エミール・ドイチュドゥラミュルト財団の寮が建てられました。そのほか多数の寄付の中から有名どころを上げると、アデナウアー、ロックフェラーJr.、グッゲンハイム等々。1925年~69年くらいに建てられ、どこの国もお国柄のデザインを取り入れているので、ちょっとした世界旅行が楽しめます。
   

一番最初に建てられたエミール・ドイチュドゥラミュルトの寮は、小さな村のよう。突然イギリスの田舎に来てしまったかと錯覚するような、教会や中庭を囲んだ美しい建物は、今では歴史的建造物に指定され、とても現代人の考える安い学生寮のイメージではありません。角の塔の部屋を借りられた学生さんが羨ましいくらい! お天気のいい日は、中庭の木陰で勉強したりおしゃべりしたりする学生達・・シテの中でも特に私の大好きな場所です。

   
   
ビエルマン・ラポルト財団ベルギー館

イギリス館
   
       左からスペイン館、ギリシャ館、メープルの赤をポイントにしたカナダ館
   
       イタリア館、アラベスクのファサードのチュニジア館、モナコ館

これが日本館(正式名は薩摩財団)。1920年代に駐日フランス大使だったポール・クローデルの呼びかけに答えて、実業家薩摩治郎八が私財を投じて建てたもの。ちょっぴり固い印象ですが、一際目を引く日本のお城をイメージしたデザイン。この薩摩治郎八という大富豪は、桁違いなスケールの浪費をヨーロッパでした豪快な人だそうで、この日本館もそのエキセントリックな行動の一部。日本政府は資金不足を理由に断ったので、ポンと私費を出した太っ腹な薩摩氏がいなければ、今シテに日本館は無いのです。富豪の浪費家で芸術愛好者などという人種の存在は、文化の面では悪くないものだと思ってしまいます。歴史的にも、ケチな統治者の時代は、大体たいした文化は生まれていないし(平民搾取不平等云々はまた別の問題として)。
私のお気に入りのスエーデン館の裏庭。こじんまりと派手さのないクリーンなイメージの建物と、ブルーのよろい戸のある庭は、とても北欧的。               
                 
                 
古い荘重な建築ばかりでなく、シンプルなアールデコや近代建築も。ル・コルビュジエのデザインの寮も2つあり、それについてはまた別のブログで書きます。
食堂、カフェテリア、図書館などのある中央の建物。前は広大な芝生。下はそのホール
敷地内の郵便局

尚各館は、自国の学生は何割までと決まりがあって、同国人で固まらず、色々な国の学生が一緒に生活して友達になれるよう配慮されているそうです。敷地内は一般も自由に入れて、散歩やジョギングをする人も。時々パリ市などが催す、歴史の専門家のガイド付きのツアーなどもあります。
Cité internationale universitaire de Paris  17 Bd. Jourdan 14e  http://www.ciup.fr/en/

0 件のコメント:

コメントを投稿