9/24/2015

マルタ・パンとアンドレ・ヴォジャンスキーのアトリエハウス


Maison-atelier de Marta Pan et André Wogenscky

先週末の ″文化遺産の日″ に、パリ郊外40キロほどのサンレミ・レ・シュブルーズにある、彫刻家マルタ・パンと建築家アンドレ・ヴォジャンスキーのアトリエハウス(1952年)を見てきました。ヴォジャンスキーは1936-56年の20年間、ル・コルビュジエの主任建築家としてユニテ・ダビタシオン等の建設に従事した後独立した建築家で、日本にも彼の作品が幾つかあります。このアトリエハウスは仕事のスペースを最優先し、キッチンや寝室などの生活スペースはとてもコンパクトですが、隅々まで計算されて作られ、快適そうな造り。仕事上協力し合っていたこともあり、2人のコミュニケーションに細心の注意を払った構造になっています。
上の写真は、トップが前庭に面したリビング側、円柱のある方は玄関側。

円柱の下の部分に玄関があるのですが、ドアのすぐ横には、ガラス張りでわざと外から見えるようにしたボイラー室があります(上左)。水道管などのチューブをカラフルな色に塗り、まるで前衛的なオブジェのよう。上右は、最高に素敵なオレンジの木製の取っ手の付いた入り口のガラスドア(マルタ・パン作?)と、入ってすぐ正面の、こちらもカラフルな鉛管達。普通は隠したくなる美しくないものを、わざと目立たせてインテリアの一部にしてしまう・・・!

とても小さなキッチン(上右、かわいい!)と、キッチンとの仕切りになっている食器棚のこちら側に、シンプルなダイニングテーブル(上左)。市内の狭いアパートと違って、広い庭のあるこのサイズの家だったら、大きなダイニングキッチンか、1室独立したダイニングルームが必ずあるのが普通ですから、これは珍しい。案内してくださった方が、この家は人をディナーに招待するなどの社交的なスペースがありませんと言っていました。
上左は、リビングルームの大ガラス窓の中と外で、内側にも石、水、緑が配されているので、中と外に隔てがなく一体になっています。上右は、それを内側から見たところ。
家の中のソファーと、外の池の水連

上左はリビングの大ガラス窓から見える前庭の、マルタ・パンの作品。リビングルームのガラス越しに、メタルの円のこちらと向こうの緑が一体に溶けあって見えます。上右は、玄関の円柱の上に見える窓と煙突。この窓は鏡のようにグリーンを映して、とても美しい。
2階のヴォジャンスキーの仕事部屋。赤い書類ケースがとてもおしゃれです

彼の仕事部屋はわりと狭く、吹き抜けのリビングの天井の中央に取り付けたような造りです。下の写真はその仕事部屋の左右の吹き抜けの部分で、下右は階段から、下左は寝室の手すりから撮ったもの。階下のマルタ・パンのアトリエと、仕事を中断せずに相談したり意見を交換するなどコミュニケーションのために、壁は部屋を密閉せずに、手すりの高さまでしかありません。

ベッドに横になって読書できるように、クッションの上の赤い壁の部分は、開閉式で明かりが入るようになっています。
くくりつけの化粧台。左の赤い棚を押すと回転して窓が開き、下の階と話ができます。
オォ!と皆から歓声があがったスーパーデザインのバスルーム。黒いメタルの枠の中に、白いタイル張りで、メトロの駅をイメージ。というのも、ヴォジャンスキーはパリのRER線のオーベール駅を、白いタイルを使ってデザインしているのです!
階下のマルタの仕事部屋とリビングのスペース。天井にレールがあって、木材など汚れる素材を使う場合に、カーテンで仕切れるようになっています。

2階の外側のテラスの張り出しは、室内に直射日光が入って、仕事の邪魔にならないように配慮されています。驚くのは1階のリビングから外に出るドア。故意に普通の人が体を斜めにしないと通れない狭いもの。玄関にはカラフルであっても鉛管が並んでいて手狭、このリビングからのドアも狭く、これ以外に出入り口はありません。
またフランス人一般の憧れは、庭で太陽を浴びて、ゆっくり食事を楽しみくつろぐこと(だからみんなカフェのテラスで食事をしたがるのです)。そのため必ずあるはずの、テーブルの置ける庭のテラスがこの家にはありません。庭に出るドアは狭すぎて、食事のトレーを持って通り抜けられないし・・2人とも仕事人間だったのか、食事に淡泊だったのか・・多分その両方という感じがしました。
家の後方は丘を利用した起伏のある広い庭で、マルタの作品があちこちに展示されています。

Maison atelier de Marta Pan et André Wogenscky
82 Av. du Général-Leclerc, Saint-Rémy-lès-Chevreuse 78470
尚、このアトリエハウスはマルタ・パンとアンドレ・ヴォジンスキー財団が管理していますが、文化遺産の日など以外は、一般公開していません。

サン・レミ・レ・シュブルーズはRER線Bの終点で、駅を出るとすぐに牛のいる牧草地があり、小川の流れるのどかな町です。クーベルタン(あのオリンピックの!)のお城や、お隣のシュブルーズの町には中世の城跡もあり、ウイークエンドの散策にぴったりのハイキングコースがお勧め。

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